」われながら卑屈だと思った。
「いや、暑いの、暑くないのって、ほんまにやり切れんかった」鼻を抜ける声で言って、眼鏡を突き上げると、「さあ、馬力を掛けて行こか。えらい仕事溜ってしもた。忙しゅうてどもならん」ガチャガチャ机の抽斗をあけたり、帳簿をくったりして、いかにも忙しそうな物音を立てていた。
「毛利君、ここへ切手貼ってんか」そう言って園井が出したハガキを見ると、小さな楷書の字でぎっしり詰めて書いてあった。それがいかにも律義者めいて、よくもこんなに根気よく丁寧に書けるものだと、豹一は感心してしまった。豹一は園井がもう十年もここで働いていることや、三年に三円しか昇給しなかったことを想い出した。
 園井は正午《ひる》まで煙草一つ吸わず、帳簿の整理をしたり、集金郵便の予告状を書いたりして、打っ続けに働き、正午のサイレンが鳴ると、自転車に乗って近所にある自宅へ昼食をたべに行ったが、豹一が喫茶店から帰って見ると、もう物差を出して、しきりに広告欄の大組みをしていた。
 そんな園井の視線を背中に感じていると、豹一はうかうか怠けるわけに行かなかった。じーんと時間の歩みが止ったような蒸暑さで、新聞をひろげ
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