十八歳の花嫁
織田作之助

 最近私の友人がたまたま休暇を得て戦地から帰って来た。○日ののちには直ぐまた戦地へ戻らねばならぬ慌しい帰休であった。
 久し振りのわが家へ帰ったとたんに、実は藪から棒の話だがと、ある仲人から見合いの話が持ち込まれた。彼の両親ははじめ躊躇した。婚約をしてもすぐまた戦地へ戻って行かねばならぬからである。しかし、先方はそれを承知だと、仲人に説き伏せられてみると、彼の両親もそしてまた彼も萬更ではなかった。
 早速見合いがおこなわれた。まだ十八になったばかしの、痛痛しいばかりに初々しい清楚な娘さんである。
 その娘さんがお茶を立てるのを見ながら、自分は苦しいばかりの幸福感をのんでいたと、あとで彼は私に語った。話はすぐ纒った。
 しかし、娘さんの両親は、結婚式はこんど晴れて帰還されてからにしたい。それまでは一先ず婚約という形式にしたいと申出た。なんといってもまだ若い、急ぐに及ばないという意見であった。いくらかの不安もあったろうか。
 ところが、すっかりその娘さんが気に入ってしまった彼は、すぐ結婚式を挙げたいと駄々をこねた。娘さんの両親はどうしたものかと迷った。
 しかし
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