ければならず、濡れた傘のじっとりした手ざわりがたまらなかった。
冬がいちばん辛かった。手足の先がチリチリ痛むのだった。客がはいって来るたびに、さっと吹きこんで来る冷たい風だ。客は戸をしめるのを忘れた。いちいちそれを閉めに立った。その都度、鼻の先がチカチカ痛みをもった。
矢張り悲しかった。
けれど、他吉は夜おそく身をこごめて日の丸湯の暖簾をくぐる時、自身で草履をしまい、ろくろく君枝の顔をよう見なんだ。
君枝が渡す下足札を押しいただいて受けとり、その手は血の色もなく静脈が盛り上って、かさかさと土のようで、子供心に君枝は胸が痛み、ひとびとが言うほど自分が祖父から辛く扱われているとは、思えなんだ。
むしろ、このように働くのを自分の運命だと、君枝はなにか諦めていたようだったが、けれどただひとつ、昼間客のすくない時の退屈さは、なんとも覚えのない悲しさで、ガラス戸越しに表通りを見るともなく見て、無気力な欠伸をはきだしていると、泣きたくなった。
そうして、いつかしくしく泣きながら居眠ってしまうのだが、そんな時いつも起してくれるのは、ガラス戸の隙間にシュッと投げ込まれる夕刊の音だった。
「あ
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