お父っあん」となっている]とお母《か》んの写真が出てるぜ」
 新太郎が町内のマラソン競争で優勝した時の十八年前の記念写真が、変装写真や俳優の写真にまじって、三枚四十銭の見本の札をつけて、陳列してあったのだ。
 出張撮影らしく、決勝点になっている長願寺の境内で、優勝旗をもってランニングシャツ姿で立っているのを、ひきまわした幕のうしろから、君枝の母親の初枝が背のびしてふと覗いている顔が、半分だけ偶然レンズのなかにはいっている。
 たしか、まだ結婚前だったらしく、そんなことから二人の仲がねんごろになったのだろうかと、〆団治はなつかしかった。
 初枝は桃割れに結って、口から下は写っていなかった。
「お父ちゃん、いたはる、しやけど、髭生やしたはれへんな」
「当り前や。二十六やそこらで髭生やすのは東西屋だけや」
「あ、お父ちゃん、お父ちゃん」
 君枝はおどりあがっていたが、急に、
「――お母ちゃん居たはれへんわ」
 しょげた。すると、次郎が、
「居てる、居てる、これや、ここをよう見てみイ、ほら、この幕のうしろからちょびっと顔だしてるやろ? わい、君ちゃんとこのお母んよう知ってるぜ。これや、これや、
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