銭天婦羅屋の種吉の女房に語っているのを、他吉が男湯ではっきりきいたところによると、オトラは君枝が学校からひけて帰って来るのを、路地の入口で待ちうけて、一緒になかへはいり、飯を食べさせたり、千日前へ連れて行ったりして、他吉の帰る間際まで、君枝の相手になっていたということだった。
「今日お前千日前へ行ったんか」
他吉は君枝のおなかを洗ってやりながら、きくと、
「行った」
「千日前のどこイ行ってん?」
「楽天地いうとこイ行った」
「おもろかったか」
「うん、おもろかったぜ。おばちゃん泣いたはった」
「なんぜや」
「芝居がかわいそうや言うて、泣いたはった。――ほんまに、おもろかったぜ」
顎の下をシャボンをつけて、洗われながら、君枝は言った。
他吉は手拭にぐっと力を入れて、
「なんぜいままで黙ってたんや?」
「そない言うたかテ……」
「おばちゃんが黙ってエ言うたんやろ?」
君枝はうなずいた。
「仕様のない婆やな」
「痛い、そないこすったら痛い!」
君枝が声をあげたので、他吉は手をゆるめて、オトラのことは成行きに任すより仕方がないと思った。
そして、君枝が折角オトラになついて、オトラを
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