。他吉が帰って来ると君枝の寝顔を見ながら一しょに夜食をたべる。時には、隣の〆団治も呼んで、御馳走してやる。夜食が終ると、寝るまえの灯明を仏壇へあげる……。
他吉の想像はろくろ首のようにぐんぐん伸びたが、仏壇のことに突き当ると、どきんと胸さわいだ。
「わいひとりの了見で決められることとちがう。こら、位牌に相談せなどんならん」
他吉は仏壇の前に坐った。
お鶴、初枝、新太郎の三つの位牌のうち、どういうわけか、新太郎の位牌が強く目に来て、さびしくマニラで死んで行った新太郎の気持を想って胸が痛んだ。
源聖寺坂の上の寺の中で、新太郎の顔を殴ったことも、想い出された。
「――ほな、おやっさんがそない行けというねやったら、マニラへ行くわ」
おとなしく、言うことをきいた新太郎の言葉が、にわかに耳の奥できこえた。
親子の想いがぐっと皮膚に来た。
すると、もう他吉は、この家に誰ひとりとして他人を入れたくないと思った。お鶴も初枝もそれをねがっているだろうと、思われた。
この三人は君枝のなかに生きているのだ――そんな想いが、改めて来た。
「君枝とふたり水いらずで暮してこそ、新太郎をマニラで死なし
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