声を立てた。
 その声をききながら、〆団治がもとの蒲団へもぐり込もうとすると、足がひやりとした。
 見ると、寝小便の跡があった。
 なるほど、それで逃げてかえったのかと、〆団治はふと他吉の喜んでいた顔を想った。

     6

 ある夜おそく、折箱の職人の家に間借りしている活動写真館の弁士がにやにや笑いながらはいって来て、どす濁った声で言うのには、
「他あやん、あんたこの間新世界で三味線をもった五十くらいの婆さんを乗せなかったかね」
「なんや、刑事みたいなものの言い様するねんなあ、気色のわるい。玉堂はん、眼鏡かけてる思て威張りなや」
「ははは……」
 左手で太いセルロイドの眼鏡を突きあげながら、橘玉堂はさむらいめいた笑い声を立てて、
「――なにが僕が刑事なもんか。僕は今日は仲人ですよ」
「仲人……? そら、お門ちがいや、うちの孫はまだ十やさかいな、おまはん仲人したかったら、散髪屋のおばはんとこイ行きなはれ」
「聴こえるがな、聴こえたら、また朝日軒のおばはん頭痛を起しまっせ」
 広島生れの玉堂は下手な大阪訛りで言って、ちょっと赧くなった。
 最近、朝日軒のおたかは頭痛を起して三日寝こん
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