んに時々背負って行ってもらうくらい故、休まん褒美を貰える筈がない、してみると、勉強のよく出来た褒美だろうかと、相好くずして寄って行くと、
「違うねん」
 君枝はぼそんと言い、実は病気で休んでいる近所の古着屋の娘の賞品を、ことづかって来たのだった。
 古着屋の娘は一学期出たきりで、ずっと学校を休んで薄暗い奥の部屋でねているのだが、父親が町内の有力者で、学務委員もしていた。
 その夜、他吉はきびしく君枝を叱りつけた。
「ほんまに情けない奴ちゃな。どない言うてええやろ。げんくその悪い。自分が優等にもならんと、よその子の褒美うれしそうに預って来る阿呆が、どこの世界にある? 阿呆んだら! ちっとは恥かしいいうことを知らんかい。来年からきっと優等になるんやぜ。えッ? 優等になるなあ。なれへんか。どっちや。返辞せんか」
「わて優等みたいなもんようならん。それよか空気草履買うてんか。よそのお子皆空気草履はいたアる」
「阿呆んだら。何ちゅう情けない子や、お前は。こっちイ来い。灸[#「灸」は底本では「炙」となっている]《やいと》すえたるさかい」
 掴まえて無理矢理裸かにし、線香に火をつけていると、君枝はわ
前へ 次へ
全195ページ中58ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
織田 作之助 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング