にか意固地な病癖みたいに思えて、自分はやはり呑気な商売をと、次郎は考えだしていたのだった。
 他吉は国際情勢が自分のマニラ行きを許さぬと判ってから、大きな声も出せぬくらい腑抜けていた。ひとつには、君枝をかたづけたという安心からであった。他吉の眼からは、次郎は働き者で、申し分ない婿に見えていたのだった。
 ところが、次郎が鶴富組の主人の依頼を断ったことを聴きつけると、他吉は二十も若がえった。
 他吉は血相かえて次郎の家へ飛んで来て、
「潜水夫が嫌になったとは、何ちゅう情けない奴ちゃ。鶴富組の御主人も言うたはったが、今に日本がアメリカやイギリスと戦《や》ってみイ。敵の沈没船を引揚げるのに、お前らの身体はなんぼあっても足らへんネやぞ。五十尋たらの海が怖うてどないする? ベンゲットでわいが毎日どんな危い目エに会うてたか、いっぺん良う考えてみイ。お父つぁん[#底本では「お父っあん」となっている]生きてたら、蝙蝠傘でど頭《たま》はり飛ばされるとこやぞ」
 と、呶鳴りつけ、
「――わいらのことは心配すんな。お前にもしものことがあっても、君枝はわいが引き受けた。わいが死んだあとは、君枝が立派に後家を守
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