えなかった。
翌日、雨だった。
雨の町を他吉は俥をひいて、ひょこひょこ走っていた。
7
半年経つと、安治川での仕事が一段落ついたので、鶴富組の主人はかねて計画していた△△沖の沈没船引揚げ事業に取り掛ることになった。
そして、新婚早々大阪を離れるのはいやだろうがと、次郎に現場への出張を頼むと、君枝との結婚の際親代りになって貰った手前もあって、当然よろこんで行くべきところを、次郎は渋った。
「あそこはたしかに五十尋はありましたね。今までなら身寄りの者はなし、喜んで潜らして貰ったんですが、どうも女房を貰っちまうと、五十尋の海はちょっと……」
△△沖の沈没船引揚げ作業は、前にもあるサルベージが手をつけて、失敗したことがあったので、次郎はそれを聴き知っていた。
「そりゃ、なるほど危険なことは危険だが……」
と、鶴富組の主人は言った。
「――危険は危険だが、それだけにまた、やり甲斐はあらアね。それに、君、説教するようだけど、もう今日じゃ、引揚げ事業ってやつは、一鶴富組の金儲けじゃないんだからね。女房も可愛いだろうが、そこをひとつ……」
「そう言われると辛いんです。おっしゃ
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