ん」
いつにない強い口調だった。
「そうかて、うちが結婚したら、隠居する、三人で一緒に住むいう約束やったやないか、お祖父ちゃんにまだ河童路地に居てもらうくらいやったら……」
結婚するんじゃなかったと言い掛けて、君枝は次郎の顔を見てはっとした。
次郎[#「次郎」は底本では「欠郎」と誤記]の顔は蒼ざめていた。その顔を横向けたまま、次郎はふるえる声で言った。
「そら、そやろ。河童路地からこんな汚い家へ来るのは、恥かしいやろ。夜逃げ同然でなけりゃ、来られんやろ。そんな気イやったら、なにも来てもらへんでも宜しい」
次郎はかっとなる性質だった。
「――どうせ僕は甲斐性なしです。気に入らんかったら、君枝を連れて帰ってもらいましょう」
次郎は本当に他吉が好きで、一緒に住みたかったのだが、ひとつには、他吉を引き取るくらいの甲斐性者になったことを、皆んなに見てほしかったのである。だから、〆団治の前で、それを他吉に断られたのが、心外だったのだ。〆団治がその場に居らなかったら、次郎はこうまで腹が立たなかったであろう。
「なにッ? もういっぺん言ってみイ」
「ベンゲットの他あやん」の声が久し振りに出た
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