ら看板を寄贈してやろうというくらいで、蝶子の三味線もこんどばかりは空しく押入れにしまったままだった。
柳吉もこんどは半分以上自分の金を出したというせいばかりでもなかったろうが、身の入れ方は申し分なかった。
公休日というものも設けず、毎日せっせと精出したから、無駄費いもないままに、勢い残る一方であった。柳吉は毎日郵便局へ行った。
身体のえらい商売だから、柳吉は疲れると酒で元気をつけた。酒をのむと気が大きくなり、ふらふらと大金を使ってしまう柳吉の性分を蝶子は知っていたので、ヒヤヒヤしたが、売り物の酒とあってみれば、柳吉も加減して飲んだ。が、そういう飲み方もしかし、蝶子にはまた一つの心配で、いずれはどちらへ転んでも心配は尽きなかった。大酒を飲めば莫迦に陽気になるが、チビチビやる時は元来吃りのせいで無口の上に一層無口になり、客のない時など椅子に腰かけてぽかんと何か考えごとしているらしい容子を見ると、梅田の実家のことを考えてるのとちがうやろか、そう思って、矢張り蝶子は気が気でなかった。
案の定、妹が婿養子を迎える婚礼に出席を撥ねつけられたといって、柳吉は気を腐らせ、貯金の中から二百円ほど
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