なんでも三年ほど蝶子はんが食うやのまずの苦労して貯めはった金と、維康さんが妹さんから無心して来やはった金で、また商売はじめはったんです」
「どんな商売……?」
「関東|煮屋《だきや》……」
 をやろうということになり、適当な売り店がないかと探すと、近くの飛田大門通りに小さな関東煮の店が売りに出ていた。
 現在年寄夫婦が商売しているのだが、士地柄客種が柄悪く荒っぽいので、おとなしい女中はつづかず、といって気性の強い女はこちらがなめられるといった按配で、ほとほと人手に困って売りに出したのだというから、掛け合うと、存外安く造作から道具一切附き三百五十円で譲ってくれた。
 階下は全部漆喰で商売に使うから、寝泊りするところは二階の四畳半一間ある切り、おまけに頭がつかえるほど天井が低く陰気臭かったが、廓の往き戻りで人通りも多く、それに角店で店の段取りから出入口の取り方など大変良かったので、値を聞くなり飛びついて手を打った。
 新規開店に先立ち、法善寺境内の正弁丹吾亭や道頓堀のたこ福をはじめ、行き当りばったりに関東煮屋の暖簾をくぐって、味加減や銚子の中身の工合、商売のやり口を覚えた。
 そして、お互
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