ちがう。それを知ってて、勝手にそんな話を決めてしまうのは、長屋の娘や思て、あなどってるのやろ。うちはあなどられても構《かめ》へんけど、お祖父ちゃんが可哀想や」
そう思い、君枝は自身の奥歯のきりきり鳴る音をきいた。
君枝はその日、事務所へ帰らなかった。
翌日、休んで職を探してあるいた。
夜、帰って来ると、速達が来ていた。
明日出社されたしと短かく書いてあった。
朝、行き、やめる旨言い、日割勘定で手当を貰い、その足で職業紹介所へ出掛けた。
2
間もなく、君枝はタクシーの案内嬢に雇われた。
難波駅の駐車場へ出張して、雨の日も傘さして、ここでも一日立ちずくめの仕事で、雇われてみると、やはりベンゲットの他あやんの娘らしい職場だった。
暫らくすると、タクシーの合乗制度が出来た。
誰が考えついたのか、同一方面の客を割前勘定で一ツ車に詰めこめば、ガソリンが節約でき、客も順番を待つ時間がすくなく、賃金も安くつくという、いかにも大阪らしい実用的な思いつきだった。
君枝はその方の案内に、混雑時など、
「△△方面へお越しの方はございませんか」
と、ひっきりなしに叫び、声も
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