眼があつく、
「――私《うち》に甲斐性がないさかいお祖父ちゃんも働かんならんのや」
と、この想いの方が強く来て、君枝は思いがけず金銭のことに無関心で居れず欲が出た。
けれど、たとえば、電話機の消毒に廻る水商売の家でいわれる――
「あんたの器量なら、何もこんなことをせんでも、ほかにもっと金のとれる仕事がおまっしゃろ」
という誘いには、さすがに君枝は乗る気はせず、やはり消毒液の勧誘の成績をあげて、特別手当をいくらかでも余計に貰うよりほかはないと、白粉つけぬ顔に汗を流して、あと一里の道に日が暮れても、せっせと歩くのだった。
半年ほど勤めたある朝、主任が、
「今日は忘れんように、萩の茶屋の大西いう質屋へ廻ってんか」
と、言った。
「あそこは五日ほど前廻ったばっかしでっけど……」
用事は電話機の消毒でも、さすがに質屋の暖簾をくぐるのは恥かしいという気持ばかりでもなく、そう言うと、
「そら判ってる。五日まえに行ったことは判ってる」
主任はなにかにやついて、
「――とにかく行ったってんか」
変だなと君枝は思ったが、
「卓上(電話)でも引きはったんでっしゃろか」
と、いいつけ通り、と
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