わが町
織田作之助
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)八十キロの開|鑿《さく》は、
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)八十キロの開|鑿《さく》は、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)[#底本では、改行後はじめの一字さげ無し]
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第一章 明治
1
マニラをバギオに結ぶベンゲット道路のうち、ダグバン・バギオ山頂間八十キロの開|鑿《さく》は、工事監督のケノン少佐が開通式と同時に将軍になったというくらいの難工事であった。
人夫たちはベンゲット山腹五千フィートの絶壁をジグザグによじ登りながら作業しなければならず、スコールが来ると忽ち山崩れや地滑りが起って、谷底の岩の上へ家守のようにたたき潰された。風土病の危険はもちろんである。
起工後足掛け三年目の明治三十五年の七月に、七十万ドルの予算をすっかり使い果してなお工事の見込みが立たぬいいわけめいて、
「……山腹は頗る傾斜が急で、おまけに巨巌はわだかまり、大樹が茂っ
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