る。されどよほど彩色等丁寧になり、昔わが子供(六十年前)時代の浅草紙にて張れる疎雑《そざつ》なる色彩のものとは雲泥《うんでい》の相違にて上等となつた。狂言にたずさはりし故人某の説に、五代目か七代目(六代目は早世《そうせい》)かの団十郎が助六の当り狂言より、この助六を思ひ浮べ、売り出せりとも聞きしが、その人もなく、吾が筆記も焼け、確定しがたき説となつた。
亀戸《かめいど》の首振《くびふり》人形 一名つるし
初めは生《いき》た亀ノ子と麩《ふ》など売りしが、いつか張子の亀を製し、首、手足を動かす物を棒につけ売りし由。総じて人出《ひとで》群集《ぐんしゅう》する所には皆玩具類を売る見世《みせ》ありて、何か思付《おもいつ》きし物をうりしにや。この張子製首振る種類は古くからありて、「秋風や張子の虎の動き様」など宝暦頃の俳書にもあり、また唐辛奴《とうがらしやっこ》、でんがく焼姉様、力持、松茸背負女、紙吹石さげたる裸体男《はだかおとこ》など滑稽な形せしもの数ありて、この類は皆一人の思付きより仕出《しだ》せしを、さかり場あるいは神社仏閣数多くある処にて売り、皆同一のつくり様にてその出来しもとは本所《
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