置土産
国木田独歩

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)餅《もち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)左右|両側《りょうそく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](明治三十三年九月作)
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 餅《もち》は円形《まる》きが普通《なみ》なるわざと三角にひねりて客の目を惹《ひ》かんと企《たく》みしようなれど実は餡《あん》をつつむに手数《てすう》のかからぬ工夫不思議にあたりて、三角餅の名いつしかその近在に広まり、この茶店《ちゃや》の小さいに似合わぬ繁盛《はんじょう》、しかし餅ばかりでは上戸《じょうご》が困るとの若連中《わかれんじゅう》の勧告《すすめ》もありて、何はなくとも地酒《じざけ》一杯飲めるようにせしはツイ近ごろの事なりと。
 戸数《こすう》五百に足らぬ一筋町の東の外《はず》れに石橋あり、それを渡れば商家《あきんとや》でもなく百姓家でもない藁葺《わらぶ》き屋根の左右|両側《りょうそく》に建ち並ぶこと一丁ばかり、そこに八幡宮《はちまんぐう》ありて、その鳥居《とりい》の前からが片側町《かたかわまち
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