ますが死ぬることもできないのでございます」

     *     *     *

 盲人は去るにのぞんでさらに一曲を吹いた。自分はほとんどその哀音悲調を聴くに堪えなかった。恋の曲、懐旧の情、流転の哀しみ、うたてやその底に永久《とこしえ》の恨みをこめているではないか。
 月は西に落ち、盲人は去った。翌日は彼の姿を鎌倉に見ざりし。



底本:「日本の文学 5 樋口一葉 徳富蘆花 国木田独歩」中央公論社
   1968(昭和43)年12月5日初版発行
初出:「文藝界」金港堂
   1903(明治36)年12月
※「路次」と「路地」、「意久地」と「意気地」の混在は底本通りにしました。
入力:iritamago
校正:多羅尾伴内
2004年7月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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