祖父《じい》さんたるに過ぎない。僕は一か月も大沢の家《うち》へ通ううち、今までの生意気な小賢《こざか》しいふうが次第に失せてしまった。
 前に話した松の根で老人が書《ほん》を見ている間《ひま》に、僕と愛子は丘の頂《いただき》の岩に腰をかけて夕日を見送った事も幾度だろう。
 これが僕の初恋、そして最後の恋さ。僕の大沢と名のる理由《わけ》も従ってわかったろう。



底本:「武蔵野」岩波文庫、岩波書店
   1939(昭和14)年2月15日第1刷発行
   1972(昭和47)年8月16日第37刷改版発行
   2002(平成14)年4月5日第77刷発行
底本の親本:「武蔵野」民友社
   1901(明治34)年3月
初出:「太平洋」
   1900(明治33)年10月
入力:土屋隆
校正:蒋龍
2009年4月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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