酒中日記
国木田独歩
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)噂《うわさ》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)大河|今蔵《いまぞう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)五月三日[#四字傍点(白丸)]
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五月三日[#「五月三日」に傍点(白丸)](明治三十〇年)
「あの男はどうなったかしら」との噂《うわさ》、よく有ることで、四五人集って以前の話が出ると、消えて去《な》くなった者の身の上に、ツイ話が移るものである。
この大河|今蔵《いまぞう》、恐らく今時分やはり同じように噂せられているかも知れない。「時に大河はどうしたろう」升屋《ますや》の老人口をきる。
「最早《もう》死んだかも知れない」と誰かが気の無い返事を為《す》る。「全くあの男ほど気の毒な人はないよ」と老人は例の哀れっぽい声。
気の毒がって下さる段は難有《ありがた》い。然《しか》し幸か不幸か、大河という男今|以《もっ》て生ている、しかも頗《すこぶ》る達者、この先何十年この世に呼吸《いき》の音《ね》を続けます
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