りき、年経てその家倒れ、家ありし辺《あた》りは草深き野と変わりぬ。されど路傍なる梅の老木《おいき》のみはますます栄えて年々、花咲き、うまき実を結べば、道ゆく旅客《たびびと》らはちぎりて食い、その渇《かわ》きし喉《のんど》をうるおしけり。されどたれありて、この梅をここにまきし少女《おとめ》のこの世にありしや否やを知らず。
[#地から2字上げ](明治三十一年四月作)
底本:「武蔵野」岩波文庫、岩波書店
1939(昭和14)年2月15日第1刷発行
1972(昭和47)年8月16日第37刷改版発行
2002(平成14)年4月5日第77刷発行
底本の親本:「武蔵野」民友社
1901(明治34)年3月
初出:「家庭雑誌」
1898(明治31)年4月
入力:土屋隆
校正:蒋龍
2009年3月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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