となら、憚《はゞか》りながら誰《たれ》でも來《こ》いなんて、自分《じぶん》も大《おほい》に得意《とくい》がつて居《ゐ》たのである。しかし得意《とくい》といふことは多少《たせう》競爭《きやうさう》を意味《いみ》する。自分《じぶん》の畫《ゑ》の好《す》きなことは全《まつた》く天性《てんせい》といつても可《よ》からう、自分《じぶん》を獨《ひとり》で置《お》けば畫《ゑ》ばかり書《か》いて居《ゐ》たものだ。
獨《ひとり》で畫《ゑ》を書《か》いて居《ゐ》るといへば至極《しごく》温順《おとな》しく聞《きこ》えるが、其癖《そのくせ》自分《じぶん》ほど腕白者《わんぱくもの》は同級生《どうきふせい》の中《うち》にないばかりか、校長《かうちやう》が持《も》て餘《あま》して數々《しば/\》退校《たいかう》を以《もつ》て嚇《おど》したのでも全校《ぜんかう》第《だい》一といふことが分《わか》る。
全校《ぜんかう》第《たい》[#ルビの「たい」に「ママ」の注記]一|腕白《わんぱく》でも數學《すうがく》でも。しかるに天性《てんせい》好《す》きな畫《ゑ》では全校《ぜんかう》第《だい》一の名譽《めいよ》を志村《しむら》
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