。妻《さい》の里子《さとこ》は父を異《ことに》した僕の妹であったのです。如何《どう》です、これが奇《あや》しい運命でなくて何としましょう。斯《かく》の如《ごと》きをも源因結果の理法といえばそれまでです。けれども、かゝる理法の下に知らず/\此《この》身《み》を置《おか》れた僕から言えば、此天地間にかゝる惨刻《ざんこく》なる理法すら行なわるゝを恨みます。
先《ま》ず如何《どう》して此等《これら》の事実が僕に知れたか、其《その》手続を簡単に言えば、母が鎌倉に来てから一月後《ひとつきのち》、僕は訴訟用で長崎にゆくこととなり、其途中山口、広島などへ立寄る心組で居《い》ましたから、見舞かた/″\鎌倉へ来て母に此《この》事を話しますと、母は眼《め》の色を変《かえ》て、山口などへ寄るなと言います。けれども僕の心には生《うみ》の父母の墓に参る積《つもり》がありますから、母には可《よ》い加減に言って置いて、遂《つい》に山口に寄ったのです。
兼《かね》て大塚の父から聞いて居たから寺は直《す》ぐ分りました。けれども僕は馬場金之助《ばばきんのすけ》の墓のみ見出して、死《しん》だと聞《きい》た母の墓を見ないの
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