出世の年代に關する諸説を掲げて、次の如き斷案を下して居る。
[#ここから2字下げ]
皆未[#レ]可[#レ]信。但趙伯林衆聖點記足[#二]以徴[#一]焉。是或其眞也。
[#ここで字下げ終わり]
平田篤胤の『出定笑語』も亦全く富永の説を祖述して居る。如何にも支那所傳の諸説の中では、この衆聖點記の説が一番實際に近く、今日歐洲の印度學者の説にも、比較的よく接近して居る。之によると釋迦は孔子と同時、老子よりはやや後輩で、然もその年代相及ぶといふのが事實らしい。
五
佛教徒は釋迦の年代を繰り上げて、釋迦が老子より教を受けたといふ『化胡經』の説を否定せんと努力しつつ、一方では『老子化胡經』に對抗せんが爲に、『老子大權菩薩經』などを僞作した。この書は今日に傳はらぬから、その年代や内容を詳にすることは出來ぬが、書名によつて内容は容易に想像される。唐の法琳の『破邪論』(唐の道宣の『廣弘明集』中に收む)の中に、この書から老子是迦葉菩薩、化[#二]游震旦[#一]の一句を引いて居る。又釋の僧敏の『戎華論』(梁の僧佑の『弘明集』中に收む)に、
[#ここから2字下げ]
故經云。大士迦葉老子其
前へ
次へ
全17ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
桑原 隲蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング