に直に贊成する譯には參らぬが、兔に角東洋人の發明は、中々大したものに相違ないと想はれる。が併し一歩退いて考へると、どうも東洋人の通弊として、研究心に乏しい結果、折角の發明も發明榮えせぬものが尠くない。製紙や印刷や羅針盤や火藥の發明は、大なる發明ではあるが、惜いことには、その家元の東洋では、發明後幾百千年を經ても、依然としてその舊態を脱却せぬ。長い年月の間に、さしたる改良進歩の跡を見得ないのであります。
 所が是等の發明が一旦西洋人の手に渡ると――傳播の經路に就いては、多少不明な點もあるが――彼等の熱心なる研究によつて、忽ちその利用若くは應用の範圍を擴めて、今日の如き製紙機械・印刷機械等が出來て、大いに世界の文明を進めることとなつたので、東洋人の發明したものでも、西洋人の手を經ぬ間は、十分にその效力を發揮することが出來ぬ有樣であります。折角の發明も東洋人にとつては、寶の持腐れの觀がないでもない。誠に遺憾千萬ではあるが、事實であるから仕方がありませぬ。我が國人も東洋人として、支那人などと同樣の缺陷をもつてをらぬとも限らぬ。果して左樣な事があるならば、教育上大いに注意して、一日も早くこの缺陷
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