軍を打ち惱まして、首尾よくさきの仕返しをいたした譯であります。
最早豫定の時間に達したから、急いで結論だけを申し述べます。先刻から約一時間の講演は、誠に不充分なものでありますが、實はこの講演の主意は、必ずしも事實の考證のみを主とした譯ではなく、事實のうちから若干の教訓を得たいといふ、目的をももつて居るのであります。そこで結論として、一二の教訓を申述べて置きたい。
(第一) 單に發明といふ點から申せば、長い歴史をもつて居る東洋人は、必ずしも西洋人に劣らぬかも知れぬ。印刷や製紙や羅針盤や火藥の外に、商業の方面では、爲替や紙幣の發行、工藝の方面では、※[#「茲/瓦」、読みは「じ」、158−7]器や漆器の製造なども、先づ支那で發明されたものらしい。近來の支那人は、例の自惚根性から、あらゆる世界の文化や文明は、支那から始まつた樣に主張するものもある。列國平和會議(弭兵會)なども支那が開祖で、已に二千四五百年前の春秋時代に實行されて居る。赤十字社の事業も、同時代から支那で實行されて居る。新聞紙の發行も、議院の開設も、支那が家元であるかの如く吹聽する者も居る。勿論これらは相當に割引を要し、その儘
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