々日本人は、不斷の用意だけはして置かねばならぬ。
吾が輩は大正の年號について、一個の解釋を有して居る。今囘もこの大正の年號の解釋を其儘、我が國民將來の方針に應用したいと思ふ。大正の字面は『易』の大畜の卦から出て居る。大畜の卦に、
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大畜剛健篤實、……日新[#二]其徳[#一]、……能止健、大正也。
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とある。大畜の卦は元來乾下艮上大畜とも、山天大畜ともいひ、天を代表する乾と、山を代表する艮との二單卦を重ねたものである。乾の卦は陽爻(※[#易の陽爻、横長の矩形一つ、562−17])のみより成立して居る故に、至健至剛である。乾は又健と通ず。乾の象は天である。天は四時の別なく絶えず運行して居る。故に天行健といふ。乾は要するに一日も油斷なく進取する義がある。日新[#二]其徳[#一]といふのはこの事である。[#図1、大畜]艮の卦は弱柔な陰爻(※[#「易の陰爻、陽爻を半分にしたものを二つ横に並べた形」、563−2])の上を、剛健なる陽爻が抑へ付けて居る。從つて内に抑へて外に出ささぬから、艮に止《とどむる》の訓がある。艮の象は山である。山は萬物を貯藏する
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