世界の舊國の一として知られてゐるのであるが、單に舊いといふだけでは、日本の誇にはならない。舊いは舊いが併しまた同時に新しいことが、實に日本の誇るべき點であらうと思ふ。日本は建國以來約二千六百年といふ長い年月を閲しつつ、その間絶えず發展進歩を續けて來た、實に新しい國である。この點が日本の特色である。舊い國は兔角或る時期に於いて、國運が停滯するとか、或は老衰するといふことを免れないのであるが、獨り我が日本のみが、絶えず發展進歩を續け得た所以は、何に因るかといへば、それは日本國民が外國と觸接して、絶えずその新しい文化、新しい知識を攝取していつたといふことに歸するのである。
元來日本は古代に於ける世界の交通の上から見ると所謂絶海の孤島で、極めて交通不便な位置に立つて居つた。世界の交通、東洋と西洋との交通は隨分古く、二千年近くも以前から開けて、ギリシア人などは夙に東洋方面へ出掛けて來て居る。しかしその東洋といふのは支那までで、日本へは來てゐない。日本が遠いヨーロッパ諸國と交通を開始したのは、支那より一千年も一千五百年もおくれてゐる。日本は交通の上から觀ると、此の如く不便な地位に立つたに拘らず、
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