ナ、太祖の孫に當る皇族であるが、平常人肉を嗜食した。明の沈徳符の『野獲編』卷二十八に、この王に就いて、
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性狼戻。嗜生[#二]食人肝及腦膽[#一]。常以[#二]薄暮[#一]。伺[#レ]有[#二]過[#レ]門者[#一]。輙誘入殺而食[#レ]之。其府第前。日未[#レ]※[#「日+甫」、第3水準1−85−29]。即斷[#二]行跡[#一]。……※[#「けものへん+契」、189−9]※[#「けものへん+兪」、189−9]梟※[#「けものへん+竟」、189−9]。乃出[#二]帝系[#一]。亦宗藩異事也。
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と述べて居る。金枝玉葉の身で、かかる嗜好を有するとは、眞に咄々《とつとつ》怪事でないか。
 Marco Polo(Yule and Cordier; Vol. II, p. 225)に據ると、福建地方の或る住民は、好んで病死にあらざる人間の肉を食ふ。かくて彼等は殺害された人間の肉を搜索しまはる。彼等は人肉の味を素敵(Excellent)として賞美するといふ。既に Yule の注意せし如く、この住民とは福建の山間に棲息する原住種族を、指すものであらう。
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