ケざるを憤り、羊肉の如く見せかけて、之に人肉を食せしめて、自己の惡戲《いたづら》氣質を滿足せしむるもあれば(金の劉祁の『歸潛志』卷六參看)、更に唐の玄宗時代の宦官の楊思※[#「瑁のつくり+力」、第3水準1−14−70]の如く、自分の殘忍性を滿足せしむる爲に、罪人の心肝を取り、手足を截り、肉を割いて之を食ふものもある(『舊唐書』卷百八十四、楊思※[#「瑁のつくり+力」、第3水準1−14−70]傳)。されど比較的普通な動機は、大約(一)飢饉の時に、人肉を食用する場合、(二)籠城して糧食盡きた時に人肉を食用する場合、(三)嗜好品として人肉を食用する場合、(四)憎惡の極、怨敵の肉を※[#「口+敢」、第3水準1−15−19]ふ場合、(五)醫療の目的で人肉を食用する場合の五種に區別することが出來る。以下一々の場合に就いて、少しく詳論して見たい。
 (一)[#「(一)」は縦中横]飢饉の時人肉を食用する場合。
 申す迄もなくこの場合が一番普通である。所が支那殊に北支那では、頻繁に飢饉が起る。英國の Hosie が曾て Journal of China Branch of Royal Asiatic S
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