、醜穢なる事實が、明代の記録に疊見して居る。
併し宦官の情事は變態である。彼等は色情を制限されて居る結果、利慾心が一倍強い。從つて勢力ある宦官の納賄得利の程度は、吾人の想像以上である。常に君側に左右して、傳達を掌どる彼等は、その一言一行によつて、他人に大なる影響を與へることが出來る。嘗て或る大官が、皇室へ見事なる品物を獻上した時、宦官への心附け十分でなかつた爲、彼等は故意にこの獻上品に毀損を加へ、是に由つてその大官は主君の御不興を蒙つたといふ。〔又嘗て太后や皇帝が地方巡幸の際、その地方の長官の心附け不足に不滿を懷いた宦官達は、長官の調進した心盡くしの料理に、中間で勝手に多量の鹽を加へて、その長官を失敗せしめた實例もある。〕兔に角宦官の歡心を買うて、位置の安全を圖るのが、支那官場の常態となつて居る。殊に天子が宴樂に耽る場合や、太后が垂廉の政を行ふ場合には、宦官に對する心附けの必要なること申す迄もない。宦官が發財致富の根源はここに在る。明の宦官王振の家産を沒收した時、金庫銀庫併せて六十餘棟に及び、珊瑚樹の高さ六七尺のもののみにても、二十餘株あつたといふ。同じく劉瑾の家産を沒收した時は、黄
前へ
次へ
全16ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
桑原 隲蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング