驍フである。
王張二氏の考證の努力は尊重に價するが、併し雙方の主張の内容には、多少の弱點の存在を否定出來ぬ。私はこの二氏とは別に、武帝の建元六年(西暦前一三五)を、司馬遷の生年とする新説を學界に提供したい。この新説の基礎は、上來既に再度も引用した『博物志』の記事に據つて、元封三年(西暦前一〇八)を司馬遷二十八歳の時と認める點に在る。元封三年より二十七年前に溯つた建元六年(西暦前一三五)を、司馬遷の生年と主張するのである。事實を告白すると、私は從來特に司馬遷の生年に就いて、何等研究の手を著けて居らぬ。ただ一兩日前に、王張二氏の主張を對比檢討した際に、突然思ひ付いた新説である。文字通り一夜作りの新説である。從つて幾分の弱點もあり、その弱點は私自身によく覺知して居る。弱點はあるが、同じく弱點のある王張二氏の所説に伍して、或は鼎足の位置を保ち得るか或は僥倖にして優勝の位置を贏《か》ち得るかと、試に茲に發表して、學界の批正を仰ぎたいと思ふ。
三
司馬遷生年異説對比表
西暦前一四五 景帝中元五年 [王國維説一歳]司馬遷生
西暦前一四四 景帝中元六年
西暦前一四三 景帝後
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