此地方の奴は危險であるから一旦歸つても後に謀叛をするだらうといふ心配があると郊外へ出した序に住民を殺して仕舞ふ。それですから花剌子模《ホラヅム》といふ國の舊都であつた所の玉龍傑赤《ウルゲンヂ》では二百四十萬の人を殺したと言ひます。是れはマホメット教徒の記録に見えて居るのでありますが、少しは誇張がありませうけれども餘程殺したには相違ない。又ヘラットといふ所があります。是れはロシアと英國との境界問題で有名な所でありますが、此ヘラットでも百六十萬の住民があつたのを其内十六人だけ殘して外は皆討斬つて仕舞つたといふ。隨分殺します。恰も草を薙倒すが如く斬ります。世界の人を虐殺したことの多きことは蒙古人の右に出るものはありますまい。
以上は住民の事ですが、戰場で蒙古の兵が敵兵を斬りまして日本なら首を斬る時に首を斬らずに左の耳を切ります。首は五十人も三十人も殺すと持ち運ぶのに困りますから、首は是れだけで人間の身體の三分の一近くの重量があるとかいひますから、持ち運びに困るです。それですから左の耳を切る。自分の手柄の代りに殺して仕舞つた奴の左の耳を斬つて、それを君の前へ持つて行つて何人殺しました、耳の數
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