つても橋を架ける必要がない。蒙古人は水に對しては甚だ意氣地がない。それが一面の氷になると働ける。夏は水になりますから蒙古人は困るです。水は蒙古人は非常に困るです。だから冬だといふと橋などを態※[#二の字点、1−2−22]架けずとも自然の氷の橋が架りますから、運動には極めて宜い。それからもう一つは冬でありますと草木が皆枯れて展望が宜いです。蒙古人は何れ他國へ侵入するのですから草木が茂つて居ると思はぬ所からどんと襲はれる。冬だと草木が枯れて十分展望が出來ますから、さうすると知らぬ他國へ行つても伏兵に襲はれる氣遣ひはないです。それであるからさういふ點より冬を撰びます。
 さてその次には何んな軍隊の組織かといふと、蒙古の軍隊の組織は十人長、百人長、千人長、一萬人長といふ風にして十進法で十人に一組長を置き、百人に一組長を置く、千人に一つ、萬人に一つ。それから各兵の持つて居る武器は無論弓矢を第一とします。蒙古兵の戰場へ行く時は必ず一人毎に弓二張、矢は箙に三杯だけ持つて行く。其外には鑢を用ゐます。鑢は何にするかといふと鏃《やじり》などの損んだときにそれを研いだり、或は武器の損じたときにそれを研ぐ。そ
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