つた枝を切つてからます/\伸び廣がる。毛蟲位村中にぶら下つたとて、人死もあるまいから、もう伐らないときめた。
大正天皇の御大典記念に學校から分けてくれた銀杏が三本立つてゐる。百年の後銀杏の家に私の子供が殘つてゐるかどうか。
びやくしんとも違ふが、似た木が六七本。よく尺とり蟲がつく。次郎にとらせようとすると、蛇ならくふ男、毛蟲は蟲がすかず、見てゐて手を出さない。仕方が無い、枯らしてしまふだけだと思つた。ある日細君が草とりをやつてゐて見つけたらしい。鎌の刄をしやくとりにひつかけてはこき下し、こき下して足でふんで一匹一匹平げてくれた。妻は軒の繩きれにすら驚く蛇きらひである。半面蟲をおそれぬ性を持つことを發見した。
便所わきの柳は早く枯れた。小池海軍少佐夫人がまだ桃割にゆつてる頃、柳の下に立つて、小さな黒いむく/\した毛蟲を指で取つてゐたことを思ひ出す。少しの間だつたが、本をかゝへて毎日遊びに來てゐた頃である。
西條八十が評釋した私の詩、
「まゐらせそろを書きがたみ、涙にくれしふる事を、語り出さば袖屏風、君はおもてをかくすらむ」其人も今はなくなつた。
『儲ける積りで、するす屋の伽羅
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