つらぬ》く
  金色《こんじき》の
百筋《もゝすぢ》の箭と
  閃めきて

湧きもめぐらふ
  新潮《にひしほ》の
巖《いは》うつ音《おと》の
  高ければ
降《お》りん隙なき
  鶚《しながどり》
聲は磯曲《いそわ》に
  かすみつゝ


  湖の畔にて


天《あま》飛《と》ぶ雲に秋立ちて
浪に聲ある湖や
關《せき》の跡《と》舊《ふ》りし東路《あづまぢ》の
騰波《とば》の湖《あふみ》は暮にけり

伏樋《ふせひ》を漏《も》れて行く水の
小川《をがは》の末にほの白く
新墾小田《にひはりをだ》を劃《かぎ》りたる
堤に松の聲もして

曉ひらく葩《はなびら》の
汀の浪に綾織《あやお》りし
蓮《はす》の浮葉も秋風の
劒《つるぎ》に觸《ふ》れて裂《さ》かれたり

光《ひかり》寂《さび》しき森の蔭
露は瞼《まぶた》に落《おつ》れども
睡《ねむ》りてさめぬ野の花の
夢にや月を迎《むか》ふらむ

傾《かたむ》きかゝる天《あま》の河《かは》
星より先《さ》きに散る花の
雪と輝《かゞや》く色を帶《お》びて
秘《ひそ》かに咲くは夜顏《よるがほ》か

紅《くれなゐ》褪《あ》せしさふらんの
蕋《しべ》の細きを拔
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