の小舟棹さし
曉を星に泣くとも
山桃の花咲く頃は
新月の眉を剃るらむ
足柄の山をめぐりて
行く水にわれは散る花
行く水にわれは花とぞ散りぬべき
足柄山の春の夕ぐれ
星のまびき
(辱められし少女あり)
矢獨蜜《しどみ》の花の緋に咲きて
鐘樓《しゆろう》朽ちたる山寺に
肩に亂れし髮剃りて
耻《やさ》しや尼となりにけり
鏡の下の刷毛《はけ》をとり
今はた色は粧《つく》らねど
枕に殘る曉の
雲の俤寒きかな
春雨|纖《ほそ》き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]廊《わたどの》に
檜扇あげてさしまねき
散りかふ花にまがひたる
胡蝶の魂をかへすとも
額にかゝる前髮の
丸《まろ》がれたるもかゝげねば
秋の風吹く中空に
迷へる夢はかへらじ
星の凶光《まびき》のあらはれて
根浪轟く淡路島
舟《うきはし》通ふ由良の戸の
跡無き浪も追はなくに
洲本《すもと》松原《まつばら》中絶えて
虹《をふさ》かゝれる白濱の
滿潮《やえ》に溺れて蘇へり
われから爲りし新尼《にひあま》の
白雪降れる宮中《みやぬち》に
簾《をす》を掲げし女嬬《はなづま》は
南の海に沈み入りて
憂き名を
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