明治の戦争文学
黒島傳治

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《》:ルビ
(例)幾許《いくばく》

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(例)ます/\
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   第一章 序、戦争と明治の諸作家

 明治維新の変革以後、日本資本主義は、その軍事的であることを、最も大きな特色の一つとしながら発展した。
 それは、維新後の当初に於ては、おくれて発達した資本主義国として、既に帝国主義的段階への過渡期に入りつゝあった世界資本主義に対抗するため軍備の力が必要だった。しかし、その軍事的性質は、国民的解放の意義が失われ過ぎ去った後までも存続し、日清、日露の戦争に勝利を博すると共に、ます/\支配的地位をかため、発展した。
 明治年間、殊に、日清戦争から、日露戦争前後にかけての期間は、最も軍国主義的精神が、国内に横溢した時期だった。そして、これは明治時代の作家の、そのかなり大部分のイデオロ
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