と違わない「国産品」を、支那でこしらえ支那で売る方がどれだけ合理的なやり方か知れない。
 大井商事は、とっくにこれに眼をつけていた。マッチだけじゃない。資本家は、紡績にも、機械にも、製粉にも、搾油にも、製糖にもこの方法を用いていた。世知辛い行きつまった内地で儲けられない埋め合せはここでつけた。
 工人達の窮乏は次第に度を加えて来た。彼等はただ饅頭《マントウ》や、※[#「火+考」、第3水準1−87−43]餅《コウビン》のかけらを食わして貰うだけだった。そして湯をのまして貰うだけだった。金は一文もなかった。
 金がない為めに、一本の煙草も吸えなかった。ぼう/\となった髪を刈ることが出来なかった。
 稼いで金を送って、家族を養うことが出来なかった。
 三日も四日も飯にありつけない、彼等のおふくろや、おやじや、妻が、キタならしいなりをして息子に面会を求めに来ても、門鑑はそれを拒絶した。
 内には、親にあいたい息子がいた。娘がいた。妻にあいたい夫がいた。夫にあいたい妻がいた。
 外には、息子や夫の仕送りを待っている親や、妻がいた。
 小山達は、会せた後の泣きごとを面倒がって、会せなかった。
 さ
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