心論的で、たゞ、主観的な強調に終始している。ブルジョア作家の戦争反対はこれ位いにして、プロレタリア文学に移ってみる。

      四

 アンリ・バルビュスの「クラルテ」も欧洲大戦から生れた、反軍国主義文学である。この小説は、はじめの方はだらだらしていて読みづらい。バルビュスは、戦争の惨禍を呪咀するばかりでなく、戦争の責任者に対して嫌悪を投げつけ、インタナショナルの精神を高揚している。「そこで君達は、祖国の武装を解かせねばならないのだ。そして、祖国観念を極度に収縮放棄して、重大なる社会観念を持たなければならないのだ。君達は、軍閥的国境を湮滅《いんめつ》しそれよりもっと悪い経済的商業的障碍を取り除かねばならないのだ。保護貿易主義は、労働の発達の中へ暴力を導引《みちび》き入れるものであり致命的な軍国主義の狂態を齎らすものなのだ。君達は、各国家の間では正当なことゝ云われ、各個人の間では『殺人』『窃盗』『不正競争』と呼ばれているところのものを廃滅しなければならないのだ。これ等のものを取除くのは、特に[#「特に」は底本では「持に」]君達でなければならないのだ。何故なら、それらのことをやるのは君
前へ 次へ
全29ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング