買収せんと努力している。而して、敵手との闘争に於ける一切の偶発事に対して独占団体の成功を保証するものは、独り植民地あるのみである。」(レニン)だから、資本家は、「植民地の征服を熱望する。」そうして、「金融資本と、それに相応する国際政策とは、結局世界の経済的政治的分割のための強国間の闘争をもたらすことになる。」
 これが即ち帝国主義××である。そうして、広大な植民地と市場を独占した資本家は、自分では何等働かずに、搾取によって寄生的な生活をする。「資本主義は、極く少数の特に富有で強力な国家を極端まで押しやり、それらの少数国家は、世界住民の約十分ノ一か、多く見積って高々五分ノ一しか擁しないに拘らず、単なる『利札切り』で全世界を掠奪しているのである。」(レニン)
 だから××××戦争は、掠奪者と掠奪者の戦争であり、泥棒と泥棒の喧嘩である。その泥棒に隷属している「植民地の住民は牛か馬のように扱われる。彼等は、種々様々な方法によって搾取される。資本輸出、租借、商品販売の場合の欺瞞、支配的国民の下に隷従させらるゝこと等によって。」(レニン)
 資本家は、国内の労働者から搾取した利潤以外に、こうして、植民地から莫大な利潤をかき集めてくる。この有りあまって、だぶついている金で彼等は、労働貴族や、労働者の指導者を買収しようとする。これは実際存在することであり、資本家は、それらの裏切者を手なずけるために、間接、直接に、あらゆる手段を弄するのである。
 彼等に買収された労働者は、もう吾々の味方ではない。それは、ブルジョアジーの手先である。その物の考え方は、もうプロレタリアートのそれではない。無産階級運動の妨げにこそなれ、役には立たないのである。そういう奴等は、一とたび帝国主義××が起れば、反対するどころか、あわてはためいて、愛国主義に走ってしまうのだ。

      三

 帝国主義××は、何等進歩的意義を持っているものではなく、却って、世界の多数の民族を抑圧すると共に、その自国内に於けるプロレタリアをも抑圧して、賃銀労働の制度を確保し拡大せんがために行われるものである。けれども狡猾なるブルジョアジーは、うまい、美しげな大義名分を振りかざす。欧洲大戦当時、フランスとイギリスのブルジョアジーは、ベルギーと、その他の国民の解放のために戦争を行っていると主張して民衆を欺いた。ほんとは、自分の掠奪した植民地を保持するために戦争をやっていたのだ。独逸の帝国主義者は、又、イギリスやフランスの多過ぎる植民地を、公平に分配をやり直そうとして戦っていたのであった。この次に来る戦争に於ても、又こういうことが起るであろう。そうして無産者は、屠殺場の如き戦場へどん/\追いやられるだろう。
 しかし、プロレタリアートは、泥棒どもが縄張りを分け取りにするような喧嘩に、みす/\喧嘩場へ追いやられて、お互いに、――たとえば膚の色が異っていようとも――同じ貧乏人同志が傷つけあいをやり殺し合いをやることに絶対に反対しなければならない。そうして、泥棒同志の喧嘩を利用して泥棒制度全体をなくすることを考えるべきである。
 それがためには、プロレタリアートは、その戦争が何のためになされているかを闡明《せんめい》しなければならない。
 反戦文学は、こゝに於て、戦争が何のために行われるか、その真相を曝露し、その真実を民衆に伝え、民衆をして奮起させるべきである。泥棒どもが、なお安全に、最も悪い泥棒制度を維持しようがためにやっていることを白日の下に曝す必要がある。
 吾々の文学はプロレタリアートの全般的な仕事のうちの一分野である。吾々は、プロレタリアートの持つ、帝国主義××××の意志、思想を、感情にまで融合さし、それを力強く表現することによって、一般の労働者農民への、影響力を広く、確実にしなければならない。文学の全×××宣伝力を挙げて、労働者農民に力強く喰い入ることを心がけねばならない。
 ××××戦争は、それを、プロレタリアートのブルジョアジーに対する××に転化し得る可能性を多分に持っている。又、プロレタリアートは、それを転化するように努力しなければならない。そこで、吾々文学は、帝国主義××××の意志を強く表現するに止まらず、全×××、宣伝力を挙げて吾々のプロレタリア運動が常に最後の目的をそこへ集中していることを強調しなければならない。(最後の目的がなんであるか、それは、こゝで詳しく書く場合ではない。)労働者農民及び多くの、所謂敵国に向って銃剣を取っていた××を××し、その銃剣のきっさきを、×××、××××××に向けさせる――そういうことを文学の持つありったけの宣伝、××をつくしてその影響を確保拡大することが必要である。

      四

 なお、新しい帝国主義戦争の危機――即ち、三ツの帝国主義ブ
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