電報
黒島傳治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)市《まち》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一段二|畝《せ》の畑を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「従弟」は底本では「徒弟」と誤植]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)むし/\した調子
−−
一
源作の息子が市《まち》の中学校の入学試験を受けに行っているという噂が、村中にひろまった。源作は、村の貧しい、等級割一戸前も持っていない自作農だった。地主や、醤油屋の坊っちゃん達なら、東京の大学へ入っても、当然で、何も珍らしいことはない。噂の種にもならないのだが、ドン百姓の源作が、息子を、市の学校へやると云うことが、村の人々の好奇心をそゝった。
源作の嚊《かゝあ》の、おきのは、隣家へ風呂を貰いに行ったり、念仏に参ったりすると、
「お前とこの、子供は、まあ、中学校へやるんじゃないかいな。銭《ぜに》が仰山《ぎょうさん》あるせになんぼでも入れたらえいわいな。ひゝゝゝ。」と、他の内儀《おかみ》達に皮肉られた。
次へ
全15ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒島 伝治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング