二銭銅貨
黒島伝治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)独楽《こま》が流行《はや》っている時分だった。

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)その中に一|条《すじ》だけ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十四年九月)

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)こせ/\する
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     一

 独楽《こま》が流行《はや》っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌《てのひら》の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がないので一生懸命にひねっても、独楽は少しの間立って廻《ま》うのみで、すぐみそすってしまう。子供の時から健吉は凝り性だった。独楽に磨きをかけ、買った時には、細い針金のような心棒だったのを三寸釘に挿しかえた。その方がよく廻って勝負をすると強いのだ。もう十二三年も前に使っていたものだが、ひびきも入っていず、黒光りがして、重く如何にも木質が堅そうだった。油をしませたり、蝋
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