短いためになお負けるような気がした。そして、緒の両端を持って引っぱるとそれが延びて、他人のと同じようになるだろうと思って、しきりに引っぱっているのだった。彼は牛の番をしながら、中央の柱に緒をかけ、その両端を握って、緒よ延びよとばかり引っぱった。牛は彼の背後をくるくる廻った。

     三

 健吉が稲を刈っていると、角力を見に行っていた子供達は、大勢群がって帰って来た。彼等は、帰る道々独楽を廻していた。
 それから暫らく親子は稲を刈りつゞけた。そして、太陽が西の山に落ちかけてから、三人は各々|徒荷《かちに》を持って帰った。
「牛屋は、ボッコひっそりとしとるじゃないや。」
「うむ。」
「藤二は、どこぞへ遊びに行《い》たんかいな。」
 母は荷を置くと牛部屋をのぞきに行った。と、不意に吃驚《びっくり》して、
「健よ、はい来い!」と声を顫わせて云った。
 健吉は、稲束《いなたば》を投げ棄てゝ急いで行って見ると、番をしていた藤二は、独楽の緒を片手に握ったまま、暗い牛屋の中に倒れている。頸がねじれて、頭が血に染っている。
 赤牛は、じいっと鞍を背負って子供を見守るように立っていた。竹骨の窓から夕
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