して、嬶《かかあ》や子供が饉《う》えようが、蚕が桑の葉をなくして死のうが、そんなことはかまわずに、只で運動をして歩く。自分の村ばかりでなく、隣村まで出かけて喋くりに行く。自分の村から百五十票取って見せると云いだせば、そういう男は必ず取る。若し、自分の村で約束したゞけ取れそうになかったら、隣村へ侵蝕してでも、無理やりに取る。
候補に立とうとするような地主は、そういう男を必ず逃がさずにとっ掴まえ、金を貸したり(勿論、貸した金から利子を取る!)田を作らしたりしておいて、必要に応じて走りまわらせるのである。又、そういう男に限って、金を借りていると義理があるように思っているのだ。
そういう男をアジテートすることは、山を抜くほど困難な仕事だ。
底本:「黒島傳治全集 第三巻」筑摩書房
1970(昭和45)年8月30日第1刷発行
入力:Nana ohbe
校正:林 幸雄
2009年6月17日作成
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