戦争について
黒島傳治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)稍《やや》もすると
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)二人は[#「二人は」はママ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)非常にワク/\する
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ここでは、遠くから戦争を見た場合、或は戦争を上から見下した場合は別とする。
銃をとって、戦闘に参加した一兵卒の立場から戦争のことを書いてみたい。
初めて敵と向いあって、射撃を開始した時には、胸が非常にワク/\する。どうしても落ちつけない。稍《やや》もすると、自分で自分が何をしているのか分らなくなる。でも、あとから考えてみると、チャンと、平素から教えならされたように、弾丸をこめ、銃先《つゝさき》を敵の方に向けて射撃している。左右の者があって、前進しだすと、始めて「前へ」の号令があったことに気づいて自分も立ち上る。
敵愾心を感じたり、恐怖を感じたりするのは、むしろ戦闘をしていない時、戦闘が始る前である。シベリアでの経験であるが、戦闘であることを思うと、どうしても気持が荒々しくなり、投げ
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