自画像
黒島傳治
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)わな[#「わな」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\
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なか/\取ッつきの悪い男である。ムッツリしとって、物事に冷淡で、陰鬱で、不愉快な奴だ。熱情なんど、どこに持って居るか、そんなけぶらいも見えん。そのくせ、勝手な時には、なか/\の感情家であるのだ。なんでもないことにプン/\おこりだす。なんにでも不平を持つ。かと思うと、おこって然るべき時に、おこらず、だまってにやけこんで居る。
どんなにいゝ着物をきせても、百姓が手織りの木綿を着たようにしか見えない。そんな男だ。体臭にまで豚小屋と土の匂いがしみこんで居る。「豚群」とか「二銭銅貨」などがその身体つきによく似合って居る。ハイカラ振ったり、たまに洋服をきて街を歩いたりしているが、そんなことはどう見たって性に合わない。都会人のまねはやめろ!
なんと云っても、根が無口な百姓だ。百姓のずるさも持って居る。百姓の素朴さも持って居る(と考える)。百姓らしくまぬけで
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