砂糖泥棒
黒島傳治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)這入《はい》って
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ヒイ[#「ヒイ」に傍点]が
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)恭々《うや/\》しく
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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与助の妻は産褥についていた。子供は六ツになる女を頭に二人あった。今度で三人目である。彼はある日砂糖倉に這入《はい》って帆前垂《ほまえだれ》にザラメをすくいこんでいた、ところがそこを主人が見つけた。
主人は、醤油醸造場の門を入って来たところだった。砂糖倉は門を入ってすぐ右側にあった。頑丈な格子戸がそこについていた。主人は細かくて、やかましかった。醤油袋一枚、縄切れ五六尺でさえ、労働者が塵の中へ掃き込んだり、焼いたりしていると叱りつけた。そういう性質からして、工場へ一歩足を踏みこむと、棒切れ一ツにでも眼を見はっていた。細かく眼が働く特別な才能でも持っているらしい。
彼は与助には気づかぬ振りをして、すぐ屋敷へ帰って、杜氏《とうじ》(職工長の如き役目の者)を呼
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