がそこに動いていた。警戒兵たちがいまいましがっている支那人の背後には、×××がいた。
商品とかえられて持ちだされてきいたルーブル紙幣は、十二銭内外で、サヴエート国内でただ一カ所密売買をやっている、浦潮《ウラジオ》の朝鮮銀行へ吸収されて行った。
鮮銀はさらに、カムチャッカ漁場の利権を買ってる漁業会社へ、一ルーブル十八銭――二十銭で売りつけた。
そこで、漁業会社は、普通相場の五分の一にあたる安いルーブル紙幣を借区料としてサヴエート同盟へ納《おさ》めるのだった。そして、ぬくらんと懐を肥やして、威張っていた。
密輸入者の背後には、その商品を提供する哈爾賓《ハルピン》のブルジョアが控えているばかりではなかった。資本主義××が控えていた。
どうすれば、こういう側面からのサヴエート攻撃の根を断つことができるか!
呉清輝は、警戒兵も居眠りを始める夜明け前の一と時を見計って郭進才と橇を引きだした。橇は、踏みつけられた雪に滑桁を軋らして、出かけて行った。
風も眠っていた。寒気はいっそうひどかった。鼻孔に吸いこまれる凍った空気は、寒いという感覚を通り越して痛かった。
十五分ばかりして、橇はひ
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